多くの生物でメラトニンは生体リズム調節に重要な役割を果たしています。


シフトワークとは、通常勤務する日中の時間帯以外の時間に交代勤務を行うことです。
現在わが国でおこなわれているシフトワークは、一日三交代制、二交代制の勤務となっている事が多いです。このシフトワークを睡眠障害という観点からみると、比較的急性の問題としては、眠れない、仕事中に眠いあるいは体がだるいという障害があります。長期的にみると高血圧、糖尿病、消化器の病気、虚血性心疾患(狭心症など)のリスクが高まります。
それではこれらの事に関してどうすればよいのかという事が問題になりますが、その前に体の一日のリズム(概日リズム、サーカディアンリズム)を知る事が重要です。これは大まかには次のような事です。体温は深夜から明け方に向かって低下し、明け方から正午に向かって上昇します。メラトニン(睡眠を安定させる)は午前2~3時ごろをピークとし、午後9~午前9時くらいの間に分泌されます。
また体の動きに適応したホルモンであるコルチゾールは明け方から午前中に分泌されます。さらにレム睡眠は午前中の時間帯に出現しやすいという特徴があります。これらの事を考えると通常の睡眠時間に睡眠をとると、体温が低下し(代謝も低下する)、メラトニンが睡眠を安定させまた明け方になるとコルチゾールが分泌され始めて、1日の活動の環境が作られる事になります。しかしシフトワーク後に睡眠をとると睡眠の開始時から次第に体温があがり、メラトニンの分泌は低下し、コルチゾールが分泌されて睡眠の流れがさまたげられる状態となるのです。ではこれらの事に対してどうすればよいかというと、睡眠をとる時間帯があたかも夜の時間帯であるようにする事なのです。これをシフトワークによってずれた睡眠の時間を元の睡眠をとる時間帯の体の状態に移動させる「位相のシフト操作」といいます。たとえばシフトワークが三交代制で準夜勤の時には、勤務前の夕方の時間帯に、深夜勤務の時には午後9時から勤務の開始の時間帯に高照度の光を浴びると、位相が遅い時間に後退し、そして体温の低下やメラトニンの分泌のピークなどが遅い方向に移動します。そのため仕事をしている時の体調はよくなり、また明け方からの睡眠がとりやすくなるのです。位相をシフトする他の方法にはメラトニンの使用がありますが、メラトニンは日本では販売されていません。
これらの位相のシフト操作以外にも良質な睡眠をとるためには、当然環境の整備も必要です。それは睡眠時間体であれば、外部は暗く、物音も少くする事などです。
したがってシフトワーク後の睡眠では厚い遮光のカーテンを用いたり、音に対しては、できるなら2重あるいは3重のガラスの入ったサッシなどを用いて、外部の音をできる限り遮断するなども必要となります。これらを行う事によってシフトワークによる体調の不良あるいは長期的な影響が軽減されるとされています。睡眠は大切です。シフトワークをされている方は上記を心にとめられ体に気をつけて下さい。


メラトニン | 看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー]

以上の通り,良質の睡眠を実現する上でメラトニンの分泌は不可欠ですが,この「ドラキュラホルモン」といわれるメラトニンは,ちょっとしたことで分泌が抑制されてしまいます。そこで,以下に,メラトニンの分泌を抑制してしまう主なものを挙げます。
(1) 寝る前2〜3時間の,200〜300ルクス以上の光刺激,特に商店街の明かりやコンビニの照明はNGです。また,テレビやパソコンのモニタの明かりもNGです。

(2) 寝る前2〜3時間の,刺激物の摂取,特にコーヒーや緑茶などカフェインの入ったものはNGです。カフェインはメラトニン分泌を強力に抑制します。

(3) 睡眠環境(寝室)における30ルクス以上の明かりはNGです。ロウソクの明かりは15ルクス位です。0.3ルクス位が理想的です。障子越しの月明かりです。理想的な睡眠環境に関しては,次回に詳細に説明します。

メラトニンはその睡眠作用から欧米で睡眠薬としてドラッグストアで販売されています。

血中メラトニンリズムの上昇位相は2時間位相後退した。 ③ 睡眠覚醒リズム ..

メラトニンの作用機序を解明するために,キンギョのメラトニン受容体の分布と性状について検討した。メラトニン受容体の体内分布を2-[125I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより検討したところ,脳,網膜に高い特異的結合を,脾臓に低い特異的結合を認めた。脳,網膜における特異的結合は,迅速,安定,可逆的,飽和可能であり,メラトニンに対して高い特異性を示した。親和性(Kd),結合部位数(Bmax)はそれぞれ,脳では27.2±1.4pM,10.99±0.36fmol/mg protein(n=6),網膜では61.9±5.7pM,6.52±0.79fmol/mg protein(n=9)であり,生理的なメラトニン受容体であると判定された。細胞内分布を調べたところ,脳では粗マイクロソーム分画(P3)>粗ミトコンドリア分画(P2)>粗核分画(P1),網膜ではP2>P3>P1の順であった。脳内分布を調べたところ,密度は視蓋-視床>視床下部>終脳>小脳>延髄の順であった。これらの結果から,メラトニンは脳内の様々な神経核や網膜に存在するメラトニン受容体に結合して作用している可能性が示唆された。特に視蓋に高密度にメラトニン受容体が分布することから,視覚情報の統合にメラトニンが重要な役割を果たしていると推察される。

次に,夜の適切な過ごし方を,次に挙げます。参考にしてください。
(1) 夜7〜8時以降は,強い光に当たらないようにしましょう。この時間帯の強い光は,サーカディアンリズムの位相を後退させてしまいます。一般的家庭の室内照明は300ルクス程度です。この程度なら大丈夫ですが,商店街の明かりやコンビニの照明はNGです。

(2) 寝る2〜3時間前までに入浴を終えましょう。メラトニンは体温を下げ,それによって入眠するのですが,寝る前2〜3時間に入浴すると,体温が上昇してしまいメラトニンの効果を相殺してしまいます。

(3) 寝る2〜3時間前に食事を終えましょう。遅い時間帯の食事もサーカディアンリズムを乱してしまいます。

(4) 寝る前の2〜3時間は,コーヒーや緑茶などの刺激物は避けましょう。出来れば,夜食も避けるべきです。

(5) 寝る2〜3時間前は,部屋を暗くして勉強しましょう。実は,学習スタンドなどの照明もメラトニン分泌を抑制してしまいます。これでは勉強が出来ない!ことになってしまいますが,実は秘策があります。室内の照明や学習スタンドの照明を,白色から電球色(赤みがかった色)にすればOKです。メラトニン分泌は青色成分の光に顕著に抑制されますが,暖色系の光では比較的抑制されません。また,私の研究室では,白色光や青色光に比べ,黄色光(電球色系)の照明下で高次認知機能作業の成績がアップする結果が出ています。更に,黄色光(電球色系)で疲労が少なく長時間成績が下がりませんでした。
そして,これまでは「蛍光灯やLED照明を昼光色系(寒色)を電球色系(暖色)に変えてもメラトニン分泌を抑制してしまうので,照明機器自体を白熱電球に変えなければならない」と考えられてきましたが,近年では「必ずしも白熱電球に変えずとも,これらの照明機器でも昼光色系を電球色系に変えるだけで睡眠の質が高まり,記憶の精度が高まるという研究結果がでています。私の研究室でも,この効果を確認しています。最近では,電球色系の蛍光管やLED管が販売されており,照明機器を本体ごと取り替えなくても,内部の蛍光管やLED管だけを変えることができます。勉強部屋や学習スタンドの照明環境を変えてみては如何でしょうか。

図2 健常者へのメラトニン投与による血中メラトニンレベルの変化

メラトニン分泌低下による入眠困難の治療薬として、本邦ではメラトニン受容体を刺激する製剤(アゴニスト)であるラメルテオン(ロゼレム®)が保険適用となっている。

今回はヒトおよび哺乳類の脳の生理的な日周リズムに関係する神経伝達物質としても解説したヒスタミンとオレキシンのスイッチング起動物質以外に、セロトニンとVIP(副交感神経関連の神経ペプチドの一種)およびコルチゾールや松果体ホルモンであるメラトニン等の日周リズムと遺伝子との関係について『脳内物質のシステム神経生理学』(有田秀穂著 中外医学社刊 2006年) 『精神の脳科学』(加藤忠史編 東京大学出版会刊 2008年)および『心と遺伝子』(山元大輔著 中公新書ラクレ刊 2006年)を参考図書として解説し、子どもの睡眠時間の短縮に対する警告、不登校児によく現れる抑うつ症状と睡眠覚醒リズムの乱れと、さらには昼夜逆転現象に対する高照度光治療等の関連事項についても言及しようと思います。

血圧は日中覚醒時に高く、夜間睡眠時に低下するサーカディアンリズムを有する。 ..

哺乳類の内因性時計が脳の視床下部の前方にある視交叉上核の中にあることは、ラットの脳で手術的に視交叉上核を周囲から切離し孤島化させて電極を埋め込むという手の込んだ実験から確かめられました。この実験では周囲から切り離されたラットの視交叉上核が約24時間の周期で興奮の増強と沈静化を繰り返すことが確認され、視交叉上核を切り離されたラット個体は生活が規則性を失うことが観察されました。このように哺乳類やヒトにはサーカディアンリズムを自発的に発生する生体時計があり、遺伝的個人差を含んで平均的に約24時間の昼行性の生活リズムが脳の視交叉上核に記憶されています。この設定は網膜が朝の光を感じるたびにリセットされて、視交叉上核の活動上昇に応じて体温が上昇すると共に、コルチゾールが上昇し、血中のアミノ酸増加と肝臓からの糖新生を促進して血糖値を上昇させ、腎臓からの水分再吸収を促進して血圧も上昇させます。このようなサーカディアンリズムは我々ヒトでは現在は生理的には昼行性にセットされており、その生体調節は次のような視交叉上核を中心とする神経的な調節メカニズムで行われています。

視神経交叉の上部に位置する視交叉上核は背内側部(シェル)と腹外側部(コア)とに分かれ、動物の持つ自発的なサーカディアンリズムは視交叉上核背内側部(シェル)の中に蓄えられています。一方で視交叉上核腹外側部(コア)には日中と夜間の明暗サイクルに伴ってグルタミン酸系の刺激が入力しています。ヒトの場合には朝の明るい日差しが網膜に入射することで視交叉上核の腹外側部が興奮し、背内側部のサーカディアンリズムを再起動(リセット)することが知られています。睡眠周期と松果体ホルモン=メラトニンおよび体温とコルチゾールの日内変動との関係についてラットの脳で総括したのが次の図版です。


メラトニン 0.04 mg/kg 単回投与時の血清中メラトニンの薬物動態及び尿中代謝物を ..

ヒトにおいては内因性時計は視交叉上核背内側部(シェル)の中にあるVP(一般には抗利尿ホルモンとして知られていますが、ここでは神経伝達物質をしてのバゾプレッシンを指します)作動性神経の24~25時間周期の自発的な活動増加-減少パターンによって引き起こされることが知られています。すなわち日中には視交叉上核シェル内のVP 作動神経の活発な活動が脳から全身に伝えられてヒトは覚醒状態になって活動し、夜間は逆にVP 作動性神経系の働きが低下することで活動が抑制されて睡眠へのスイッチング機構が働くのです。シェルの自発的な活動パターンは光刺激を受けるとコアに存在するVIP 作動性神経系の働きがセロトニン神経系の活動増加と協調して高まることで刺激入力を受け、毎日修正されてほぼ正確に24時間周期に睡眠と覚醒が繰り返されるようにリセットされるのです。ここで自発的と言ってしまいましたが、なぜこのような規則的な変動が毎日同じように繰り返されるのかが、近年は遺伝子の発現制御に関する研究から分子レベルでの解明が続けられています。このサーカディアンリズムの発生に遺伝子が関与する分子生化学的なメカニズムは山元大輔先生が著書の『心と遺伝子』第5章でハエと実験哺乳動物の研究成果を集大成して分かり易く解説しておられます。

ラットの位相前進時(8 時間)の概日リズム再同調に対するメラトニンの作用.

哺乳動物で視交叉上核の異変が起こるとサーカディアンリズムが短くなったり長くなったりすることは、1988年にタウと名付けられた自由継続リズムが約20時間のハムスターの研究から明らかにされました。タウの遺伝子を2対持つハムスターは自発周期が約20時間、タウの遺伝子を1対だけ持つハムスターの自発周期は約22時間になっていましたので、遺伝子変異がサーカディアンリズムを変化させることが明らかになったのです。その後1994年になって自由継続リズムの周期が28時間という突然変異体が系統化されクロックと名付けられました。これらの突然変異体の遺伝子を詳しく調べて、それまでにわかっていたキイロショウジョウバエでのサーカディアンリズム発生遺伝子である「ピリオド」との類似性から哺乳類ではピリオド1、ピリオド2、ピリオド3の3種類のピリオドタンパク質を作る遺伝子が視交叉上核内で働いていることがわかりました。生体時計を刻む本来の役割はピリオド2にあり、ピリオド1は光の刺激を受けると直ぐにタンパク質を作る転写を起こして光同期性を発すること、さらにクリプトクロームという光に敏感なタンパク質がピリオドタンパク質と複合体を作って、核内にそれを移動させる働きから日周リズムを調節しているらしいこともわかってきています。いまやサーカディアンリズムは種を越えてハエと人類でも共通の基盤から進化した脳の働きであり、しかもクリプトクロームは植物で青色光の受容体蛋白として見つかったもので、それが哺乳類では光によって駆動される体内時計の一部品となっていたということは、植物と動物の壁さえ越えて生体内時計が進化してきたことを連想させます。

メラトニンは夜間に松果体から分泌されるホルモンで、日中および夜間の光曝露より影響

メラトニンは主に松果体で産生されるホルモンで,その産生量は体内時計にコントロールされて日内変動を呈し,夜間に高く,日中は低いという概日リズムを示す.また,夜間でも強い光照射により短時間で抑制される.血中濃度は個人差が大きいが,同一被験者では毎日ほぼ一定の日内変動パターンを繰り返し1),性別,女性の月経周期には影響を受けない.血中濃度の変動リズムは深部体温の変動リズムとともに概日リズムの位相を反映する指標として用いられている2)

血中メラトニン濃度についても同様に解析した。その結果、 アユ松果体からの ..

生物時計のしくみは図11に示されています。視交叉上核からの神経伝達経路は眼から入った光の信号が視神経を経て視交叉上核へ伝えられ、上頚神経節を経て、松果体に達する神経系路を持っています。松果体はメラトニンというホルモンが産生され、血中メラトニン量は夜に高値を示し、昼間にはほとんど検出されません(図11)。

○マラリア原虫は血中メラトニンの感知により自身のリズムをヒトに同期させることを

このように私たちヒトには長い進化の歴史を背負って働くサーカディアンリズム発生装置が備わっていて、基本的に昼行性にセットされています。それを現代社会では電気という第二の光で昼行性のヒトを夜行性に変える現代的ライフスタイルが拡張していますが、遺伝子の設定を急激に変えることは難しいので、夜行性のヒトではコルチゾールの日内変動が影響を受けていつもストレス漬け同様にコルチゾールが出続ける弊害が起こる可能性が憂慮されます。睡眠中に分泌されるメラトニンは良い睡眠状態を作り出すホルモンで、セロトニンから脳の松果体で生成されるホルモンですが、生体内で睡眠中に身体の錆とも呼ばれる活性酸素を分解したり、抗ウイルス作用を増強するなど生体防御と老化防止に重要な役割のあるホルモンです。またメラトニンは肌を白くしたり性ホルモンの調節にも関与しているので、夜間に睡眠が不足すると体内の活性酸素が分解されず細胞がダメージを受け、風邪などが治りにくく、肌も浅黒くなり生理不順が起こったりします。光不足の夜行性の生活習慣ではセロトニンの分泌も減少しやすく、セロトニン不足による抑鬱状態も出る危険性が推察できます。このような状況を三池輝久先生は「小児慢性疲労症候群」と規定して不登校児童の治療に応用しておられます。三池先生は夜行性になっている不登校児童の睡眠周期を昼行性に修正する治療法として高照度光療法を提唱しておられますが、全部とは言えなくても一部の不登校児童には高照度の光でセロトニン神経を活性化して夜間はよく眠らせるように誘導することは有効な方法なのかも知れません。

血漿中のメラトニンとコルチゾールは radioimmunoassay によって測定した。PBMCs ..

Ⅰ 悪性腫瘍 71第4章 時間治療の実際―生体リズムと薬の使い方―1.正常時には中枢時計である視交叉上核から末梢時計である各臓器や細胞のサーカディアンリズムが階層的に制御されている 生体には,体内時計が存在し,種々の生体リズムを制御しています1,2).その本体は,視神経が交差する視交叉上核に位置し,時計遺伝子のフィードバック機構により制御されています.この遺伝子は中枢のみならず末梢組織でも発現しておりローカル時計として機能しています.すなわち,生体は体内時計の階層構造をうまく利用し,生体のホメオスタシス機構を維持しています.この中枢から末梢の時計の制御には神経系やホルモンのリズムが関与しています3,4).中枢時計が,神経伝達物質とペプチドホルモン,増殖因子およびグルココルチコイドなどの細胞外シグナル伝達のリズムを制御し,末梢細胞の細胞周期やアポトーシスをリズミックに制御しています.細胞の分裂リズムを制御しているWee1遺伝子も時計遺伝子により制御されています5).2.生体リズムの破綻により,コルチゾールや免疫細胞などのサーカディアンリズムが変容し,発がんリスクの増加やがん患者の予後に悪影響をおよぼす 夜間のシフトワーカーは生活リズムが変容するため乳がんの発がんリスクが高まります6).そのリスクは,夜に勤務する年間あたりの回数および週間あたりの時間数と関係して増加します.乳がんの発がんリスク要因として,日周リズムが家族歴以上に重要な要因です6).男性労働者を対象に,勤務時間帯と前立腺がんにかかるリスクの関連が検討され,働く時間が昼夜決まっていない交替制勤務者では,仕事の時間が昼間に限られる日勤者に比較して3.0倍かかりやすい7).仕事の時間が夜間のみの夜勤者については日勤者に比べ2.3倍のリスクが上昇します.家族性睡眠相前進症候群は,PER2遺伝子の662番目のセリンがグリシンに置換した突然変異(S662G)と関係しています8).またPER3の遺伝的多型が,ヒトにおける乳がんの発症リスクと関連します9). Per2変異マウスの行動リズムは,野生型のマウスと比較して周期が短縮し,恒暗条件下では日周リズムが障害されています3,4).細胞の増殖およびDNA損傷の制御に関与しているc-Mycは,野生型のマウスで日周リズムを示しますが,Per2 変異マウスにおいてリズムの位相が変化し過剰に発現しています.Per2 変異がγ線照射後のp53によるアポトーシスを部分的に障害し,遺伝的な不安定性や損傷細胞の増加を導き細胞ががん化します.Per2 変異がBmal1の発現を減少させ,それと関連してc-Mycを抑制しているBmal1/Clock,Bmal1/Npas2が減少し,結果的にc-Mycの発現が増加し,遺伝的な不安定性や損傷細胞の増加を導き細胞ががん化します.3.がん化により中枢から末梢の生体リズム制御機構が変化する 転移性の乳がん患者で,唾液中のコルチゾールの日周リズムが変容しています10).コルチゾールの日周リズムを維持している患者は,コルチゾールの日周リズムが変容している患者と比較して,延命が促進されます.また転移性の大腸がん患者において,睡眠覚醒のリズムが変容しています11).睡眠覚醒の日周リズムを維持している患者では,睡眠覚醒の日周リズムが変容している患者と比較して,延命が促進されます11).大腸がん患者の治療で,生体リズムの調整により,生存率やQOLを向上できます11,12).

[PDF] 照明光のサーカディアンリズムへの作用と夜間屋内照明のあり方

このようにメラトニンは昼間の明暗サイクルにより変化することから内因性リズムを持つ生物時計に24時間の指標を与える働きをしています。またメラトニンは生物時計の文字盤の役割もしています。すなわち夕方から夜間にかけて血中メラトニン量が増加すると、視交叉上核と全身の臓器にあるメラトニン受容体に情報が伝えられ、夜間、休止した方がよい各臓器に生体変化を起こさせます。すなわち脳では睡眠中枢を優位に働かせて睡眠を起こさせ、副交感神経を優位に保つことにより自律神経系を鎮静させ、代謝では同化作用を起こし、免疫系を賦活させるのです。昼間に血中メラトニンが低下、消失すると脳の覚醒中枢が優位になり、目覚めて活動し、自律神経系においても交感神経系支配が優位となり、内分泌系機能もそれに適した状態がつくられるのです。

唾液メラトニン濃度,尿中メラトニン代謝産物 aMT6s 濃度,末梢―中心皮膚温勾配 DPG,.

「朝起きられない病」として知られる睡眠覚醒相後退障害(DSWPD/DSPS)に対して、夕刻(平均18:10)の超少量(中央値1/14錠)のラメルテオンの使用が、投与を受けた患者さんの睡眠覚醒リズムを平均約3時間有意に前進させ、「夜眠れない/朝起きられない/起きても体調が悪い」という諸症状の改善に効果的であったという内容を、複数例の症例報告として発表しました。また、既存の研究の薬理学的レビューを行うことにより、DSWPDの加療には通常用量(1錠=8mg)では多すぎると考えられること、「眠前」の投与だと服用時刻が遅すぎると考えられることを示しました。本報告は、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥兼任講師らによって、米国睡眠医学会(AASM)公式雑誌のJournal of Clinical Sleep Medicine誌に、2022年8月5日に発表されました。

各群の松果体および血清中のメラトニン、セロトニン値をAnalysis of Varianceを用.

しかし、メラトニンの睡眠作用は不眠症を改善するほどの効果はなく、就寝前に服用しても寝付きを少し良くする程度のものとされています。