(上)メラトニンとコルチゾールに注目 分泌量やタイミングが大切


1日のなかでメラトニンの分泌が高まる時間になると、その作用で手足などの末端から熱が放散されやすくなり、体の深部体温が低下します。


コルチゾールやセロトニンとメラトニンの関係性も睡眠において大切です

これは「熱放散」と呼ばれ、人間は深部体温が下がると体が休息状態に入りやすくなり、その結果、眠気を感じるようになります。つまり、メラトニンは体内時計などに深く関わるほかにも、直接的な睡眠作用を持っているのです。


動物は活動時間帯(ヒトは通常日中で、ラットは通常夜間)になると目覚めて、活動時間帯以外には眠る傾向を持っています。この1日を通じての日周リズムのことを、それぞれの意味する内容は文脈中で微妙に違うことはありますが、概日リズム、内因性周期、あるいはサーカディアンリズムと呼んでいます。サーカディアンリズムは近似的には約24時間の周期で繰り返されていて、具体的には昼行性動物では日中活動期のコルチゾール上昇と夜間休息期のメラトニン上昇と2種類のホルモン分泌量の周期変動に特徴づけられています。下の図はヒトでの日中のコルチゾール上昇と夜間のメラトニン上昇のパターンの概略を示しています。

メラトニンやコルチゾールは体内時計によってコントロールされています。

哺乳動物は古代に爬虫類から分岐発生した時期には夜行性であったと推定されていて、その後ヒト科に進化するまでに幾度かの夜行性と昼行性の遍歴があったことが、私たちの網膜視細胞が基本的に2原色から派生した3原色感覚であることから推測されています。ヒトのサーカディアンリズムについては暗闇の地下壕で自由な時間に寝て自由な時間に起きる生活を観察した実験から、約25時間の周期があると初期の報告で提唱されていましたが、その後の潜水艦乗務員の生活リズムの研究から平均して約24時間程度であることが報告されました。またさらに近年の研究から哺乳類に遺伝的な素因による個体差が存在することも知られるようになり、内因性時計と遺伝子の関係解明が進んでいます。

今回はヒトおよび哺乳類の脳の生理的な日周リズムに関係する神経伝達物質としても解説したヒスタミンとオレキシンのスイッチング起動物質以外に、セロトニンとVIP(副交感神経関連の神経ペプチドの一種)およびコルチゾールや松果体ホルモンであるメラトニン等の日周リズムと遺伝子との関係について『脳内物質のシステム神経生理学』(有田秀穂著 中外医学社刊 2006年) 『精神の脳科学』(加藤忠史編 東京大学出版会刊 2008年)および『心と遺伝子』(山元大輔著 中公新書ラクレ刊 2006年)を参考図書として解説し、子どもの睡眠時間の短縮に対する警告、不登校児によく現れる抑うつ症状と睡眠覚醒リズムの乱れと、さらには昼夜逆転現象に対する高照度光治療等の関連事項についても言及しようと思います。

深夜には、代わりに「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが増えます。

シフトワークとは、通常勤務する日中の時間帯以外の時間に交代勤務を行うことです。
現在わが国でおこなわれているシフトワークは、一日三交代制、二交代制の勤務となっている事が多いです。このシフトワークを睡眠障害という観点からみると、比較的急性の問題としては、眠れない、仕事中に眠いあるいは体がだるいという障害があります。長期的にみると高血圧、糖尿病、消化器の病気、虚血性心疾患(狭心症など)のリスクが高まります。
それではこれらの事に関してどうすればよいのかという事が問題になりますが、その前に体の一日のリズム(概日リズム、サーカディアンリズム)を知る事が重要です。これは大まかには次のような事です。体温は深夜から明け方に向かって低下し、明け方から正午に向かって上昇します。メラトニン(睡眠を安定させる)は午前2~3時ごろをピークとし、午後9~午前9時くらいの間に分泌されます。
また体の動きに適応したホルモンであるコルチゾールは明け方から午前中に分泌されます。さらにレム睡眠は午前中の時間帯に出現しやすいという特徴があります。これらの事を考えると通常の睡眠時間に睡眠をとると、体温が低下し(代謝も低下する)、メラトニンが睡眠を安定させまた明け方になるとコルチゾールが分泌され始めて、1日の活動の環境が作られる事になります。しかしシフトワーク後に睡眠をとると睡眠の開始時から次第に体温があがり、メラトニンの分泌は低下し、コルチゾールが分泌されて睡眠の流れがさまたげられる状態となるのです。ではこれらの事に対してどうすればよいかというと、睡眠をとる時間帯があたかも夜の時間帯であるようにする事なのです。これをシフトワークによってずれた睡眠の時間を元の睡眠をとる時間帯の体の状態に移動させる「位相のシフト操作」といいます。たとえばシフトワークが三交代制で準夜勤の時には、勤務前の夕方の時間帯に、深夜勤務の時には午後9時から勤務の開始の時間帯に高照度の光を浴びると、位相が遅い時間に後退し、そして体温の低下やメラトニンの分泌のピークなどが遅い方向に移動します。そのため仕事をしている時の体調はよくなり、また明け方からの睡眠がとりやすくなるのです。位相をシフトする他の方法にはメラトニンの使用がありますが、メラトニンは日本では販売されていません。
これらの位相のシフト操作以外にも良質な睡眠をとるためには、当然環境の整備も必要です。それは睡眠時間体であれば、外部は暗く、物音も少くする事などです。
したがってシフトワーク後の睡眠では厚い遮光のカーテンを用いたり、音に対しては、できるなら2重あるいは3重のガラスの入ったサッシなどを用いて、外部の音をできる限り遮断するなども必要となります。これらを行う事によってシフトワークによる体調の不良あるいは長期的な影響が軽減されるとされています。睡眠は大切です。シフトワークをされている方は上記を心にとめられ体に気をつけて下さい。

脳内でセロトニンが発生した14~15時間後にメラトニンが分泌され、眠気をもたらします。つまり、朝に太陽光を浴びてセロトニンを作っておくことが、夜間にメラトニンの分泌量を増加させることになり、その結果、質の良い深い睡眠を得ることに繋がるのです。

寝付きの悪さにお困りの方は、キットでコルチゾール量を確認してみましょう。

昨今の企業では、働き方改革や健康経営の促進により、長時間労働の削減、勤務間インターバルの導入などで、従業員が十分な睡眠時間を得るための取組みが広がっています。

哺乳類の内因性時計が脳の視床下部の前方にある視交叉上核の中にあることは、ラットの脳で手術的に視交叉上核を周囲から切離し孤島化させて電極を埋め込むという手の込んだ実験から確かめられました。この実験では周囲から切り離されたラットの視交叉上核が約24時間の周期で興奮の増強と沈静化を繰り返すことが確認され、視交叉上核を切り離されたラット個体は生活が規則性を失うことが観察されました。このように哺乳類やヒトにはサーカディアンリズムを自発的に発生する生体時計があり、遺伝的個人差を含んで平均的に約24時間の昼行性の生活リズムが脳の視交叉上核に記憶されています。この設定は網膜が朝の光を感じるたびにリセットされて、視交叉上核の活動上昇に応じて体温が上昇すると共に、コルチゾールが上昇し、血中のアミノ酸増加と肝臓からの糖新生を促進して血糖値を上昇させ、腎臓からの水分再吸収を促進して血圧も上昇させます。このようなサーカディアンリズムは我々ヒトでは現在は生理的には昼行性にセットされており、その生体調節は次のような視交叉上核を中心とする神経的な調節メカニズムで行われています。


メラトニンは、脳の松果体から生成されるホルモンで、夜になると自然と眠くなるの ..

視神経交叉の上部に位置する視交叉上核は背内側部(シェル)と腹外側部(コア)とに分かれ、動物の持つ自発的なサーカディアンリズムは視交叉上核背内側部(シェル)の中に蓄えられています。一方で視交叉上核腹外側部(コア)には日中と夜間の明暗サイクルに伴ってグルタミン酸系の刺激が入力しています。ヒトの場合には朝の明るい日差しが網膜に入射することで視交叉上核の腹外側部が興奮し、背内側部のサーカディアンリズムを再起動(リセット)することが知られています。睡眠周期と松果体ホルモン=メラトニンおよび体温とコルチゾールの日内変動との関係についてラットの脳で総括したのが次の図版です。

睡眠の後半の明け方には、覚醒準備のため副腎からコルチゾールが分泌される。

睡眠障害、不眠症でお悩みの方やメラトニンを調べてみたい方のための検査です。

唾液中コルチゾール(salivary cortisol) 唾液中メラトニン(salivary melatonin)

24時間で1回転する地球上で生活する他の動植物同様、私たち人間も、体内時計が有り、24時間のリズムで、睡眠と覚醒を初めとする様々な生物現象を繰り返しています。日中は、活動に必要な糖代謝が高まり、夜は、や、が分泌され、ストレスの解消や、日中酷使した肉体や脳のメンテナンスがおこなわれます。

メラトニンの分泌が始まり,睡眠・覚醒リズムが整い出してきます.1歳頃まで ..

今回は,勉強が身につく夜の過ごし方に関してお話しします。今回は,受験生を含む多くの学生諸君に参考にしてほしいと思います。皆さんは夜何時まで勉強していますか? 授業の予習・復習や受験対策で照明機器(学習スタンド 等)の下,教科書や参考書を一生懸命読んでいることでしょう! 更に眠気覚ましにコーヒーや緑茶を飲んで,夜食を食べたりもしているでしょう。しかし,この様な夜の過ごし方は,睡眠の質を落としてしまい,ひいては学習効率を低下させてしまいます。本稿で提案する方法をぜひ取り入れてみて下さい。きっと快適な睡眠を手に入れることが出来,勉強した内容がぐ〜んと身に付くことでしょう。

深部体温,メラトニン分泌,コルチゾール分泌はいずれも顕著な概日リズムを,末梢循環単核

最初に,私たちが寝ている間に身体の中で何が起きているかをお話しします。睡眠とホルモンに関する解説です。 睡眠に関連したホルモンは,2つに大別できます。1つは,「寝ている間」に分泌されるホルモンです。そして2つ目は,「夜」に分泌されるホルモンです。つまり前者は睡眠に依存したホルモンであり,後者はサーカディアンリズムに関連したホルモンです。睡眠に依存したホルモンの代表格は,成長ホルモンやプロラクチンです。一方,サーカディアンリズムに関連したホルモンの代表格は,メラトニンとコルチゾールです。 成長ホルモンは,身体の成長,修復および疲労回復の役割を果たします。そして,睡眠初期のノンレム睡眠(大変深い睡眠)時に最大の分泌量を示します。プロラクチンは,睡眠開始直後から分泌され,朝方に向かって増大します。乳汁分泌促進,ストレス耐性の増加,身体修復の作用があります。睡眠時には,自律神経の副交感神経が働き細動脈が弛緩し,成長ホルモンやプロラクチンが身体の隅々に運ばれることになります。とりわけ,睡眠の初期段階でしっかり寝ると, 身体の疲労が取れます。

[PDF] 東京西川の4層特殊立体構造マットレスの 睡眠の質 ..

メラトニンは,習慣的就床時間の1〜2時間前から分泌され始め,深部体温が最低になる1〜2時間前にピークを迎えます。つまり深部体温が最低になる時間は朝の4時頃ですから,深夜2〜3時頃がピークになります。メラトニンは,サーカディアンリズムに従い夜に分泌され,光刺激によって分泌が抑制されるので,「ドラキュラホルモン」とも呼ばれます。メラトニンは,入眠作用や睡眠維持作用があります。また,サーカディアンリズムの強い同調因子で,夕方〜深夜のメラトニンはサーカディアンリズムの位相を前進させます。一方,コルチゾールは,睡眠初期のノンレム睡眠(大変深い睡眠)で分泌が抑制され,朝の起床前後で分泌は最大値示します。コルチゾールは,血糖値維持や肝臓における糖新生促進などの作用があります。これは日中に活発に過ごすために使われ,夜に向けて減少していきます。そして,ストレスに耐えて生活するためにも重要な役割を果たしており,「ストレスホルモン」とも呼ばれています。

① メラトニンとコルチゾール分泌の概日リズム評価により、乱れていた分泌周期が大幅に改善

朝日を浴びて夜にメラトニンの分泌が始まったとしても、生活環境の影響でメラトニンが減少してしまうことがあります。そうなると眠りを妨げる原因になるため、注意が必要です。

なかでも成長ホルモンやコルチゾール、メラトニンは、睡眠や概日リズムに関係するホルモンとして知られています。 出典

メラトニンは,松果体でビタミンB12の作用によりセロトニンから生合成されます。メラトニン分泌は,その作用により,睡眠初期のノンレム睡眠(大変深い睡眠)を実現します。睡眠初期のノンレム睡眠(大変深い睡眠)の効果をまとめると以下のようになります。
(1) 大脳皮質を充分に休めるための睡眠。

(2) 成長ホルモンによる身体の成長,修復および疲労回復を助ける睡眠。

(3) コルチゾールの分泌を抑制する睡眠。就寝中に持続的にコルチゾールが出続けると,血糖値が高くなり過ぎたりして,成人病を来す恐れがあります。さらに,コルチゾールが過剰に脳に運ばれると,記憶を定着させるために大事な海馬という器官が侵害されます。

(4) 嫌な記憶を消去する睡眠。嫌な記憶は,ストレスになり,安定した睡眠を阻害するのみならず,ストレスホルモンであるコルチゾールを大量に分泌させてしまい,海馬を侵害します。

(5) 脳細胞を修復・保護する睡眠。睡眠を誘発する物質(睡眠物質)の一つである酸化型グルタチオンは,日中に蓄積されていき,ある程度溜まると眠気を生じさせます。そして,入眠するとニューロンの過剰活動により出来た細胞毒などから脳細胞を保護します。

メラトニンのこのような分泌リズムは、活動量の高い時間帯に分泌量が高いコルチゾールの分泌リズムと対照的である。 合成と分泌の制御

この記事では、睡眠の質のチェックと、睡眠とホルモンバランスの関係について解説します。

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メラトニンは松果体より生成され、コルチゾールと逆のリズムで分泌される、眠りを促すホルモンです。 (sleep designの図を引用)

されます。メラトニンは、入眠と睡眠の維持を行う一方、老化の原因となる活性酸素の処理もしてくれます。そして、朝陽を浴びるとメラトニンの分泌が抑えられ、コルチゾールの分泌が再び高まります。

また、睡眠ホルモンのメラトニンが持つ強力な抗酸化作用で肌の老化を防ぎ ..

ヒトにおいては内因性時計は視交叉上核背内側部(シェル)の中にあるVP(一般には抗利尿ホルモンとして知られていますが、ここでは神経伝達物質をしてのバゾプレッシンを指します)作動性神経の24~25時間周期の自発的な活動増加-減少パターンによって引き起こされることが知られています。すなわち日中には視交叉上核シェル内のVP 作動神経の活発な活動が脳から全身に伝えられてヒトは覚醒状態になって活動し、夜間は逆にVP 作動性神経系の働きが低下することで活動が抑制されて睡眠へのスイッチング機構が働くのです。シェルの自発的な活動パターンは光刺激を受けるとコアに存在するVIP 作動性神経系の働きがセロトニン神経系の活動増加と協調して高まることで刺激入力を受け、毎日修正されてほぼ正確に24時間周期に睡眠と覚醒が繰り返されるようにリセットされるのです。ここで自発的と言ってしまいましたが、なぜこのような規則的な変動が毎日同じように繰り返されるのかが、近年は遺伝子の発現制御に関する研究から分子レベルでの解明が続けられています。このサーカディアンリズムの発生に遺伝子が関与する分子生化学的なメカニズムは山元大輔先生が著書の『心と遺伝子』第5章でハエと実験哺乳動物の研究成果を集大成して分かり易く解説しておられます。