-----■ 鬱フラグブレイカー、鬱クラッシャーズ ■-----
では実行しろ」
胸に手を当て深呼吸数回。心拍数がある程度下がったことを実感させるためだ。
「……では、いきます」
覚悟を決めた眼だ。
戸がわずかに開いているのに、その意味にも気づかず、ガラリと戸は引かれた。
「失礼しまー……」
落ちてくる黒板消しが、ネギの頭上で止まる。一瞬。よほど眼がよくなければ気づかないであろう時だけ。
しかしレジストも無意味に終わる。しっかり頭に落ち、粉塵がまき散らされる。
「あらあら」
「ゴホッあはは、引っ掛かっちゃいましゲホッ」
そしてそのまま第二歩を進めようとしてロープに引っ掛かる。派手にこけ、どうやったのか水の入ったバケツがさかさまに落ちてきた。頭に。計算され尽くした罠はそれだけに留まらず、おもちゃの矢が見事命中、更にバランスを崩したネギは見事180°回転し教卓に衝突。全てが終わる。
教室は爆笑の渦だ。数名、笑っていないのもいるが。
ネギの背中が教卓から剥がれ、やっと人間の在るべき姿に戻る。ただし、バケツを頭に被ったまま。
「うー」
「あ、あれ……?」
「え?」
やっとその姿がおかしいことに気づく面々。。
「ええええええええ!? 子供!?」
「大丈夫!?」
「ごめんねー、新任の先生だと思って」
信任の先生だったら謝らないのだろうか、などと無粋な疑問が頭をよぎるが、気にしないことにする。
しずなが手を叩き、騒ぎを鎮める。
「いいえ、この子が新任の先生よ」
出る機を逸した。だが気にしない。突入。
「あれ? この子は?」
「転校生ですかー?」
真っ黒な服の、私服の転校生はいないと思う。明日は何歳程度で来てやろうか。
「フフ、自己紹介してもらいましょうか」
悪戯心を刺激されたのか、しずなは私の説明はなしで自己紹介に移る。エヴァが驚いているのが楽しみだったが、期待を裏切らずものすごい顔をしている。
私は邪魔にならないよう、しずなの傍らにて目立たぬようたたずんでいる。
「ええと……あ……ボクはこの学校で英語を教えることになりました、ネギ・スプリングフィールドです。三学期だけですけどよろしくお願いします!」
一瞬の間。
そしてまた爆発するように教室は騒がしくなる。本日最高音量を記録した。
転校生ばりに質問攻めにされもみくちゃにされ、困惑しているネギ。今まで接したことのある女のタイプとは全然違うからか。
「マジ……ですか?」
「ええ、マジなんですよ」
少し離れた場所でしずなと千雨が話している。
「ホントにこの子が今日から担任なんですかー!?」
「こんなカワイイ子もらっちゃっていいのー!?」
「コラコラ。あげたんじゃないのよ? 食べちゃダメ」
抱きしめられ頬ずりされて――――うらやましい。今度アルトにやってみよう。
「ネギ君はちゃんと教員の資格を持ってるけど、見ての通りあなたたちより年下よ。お手柔らかにね」
『ハーイ!』
私の存在は忘れ去られているようだ。
落ち着くまで待つ。どうせこの後明日菜が一騒動起こすだろうし。
そう思っていると、正史通りに明日菜がネギの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「ねえアンタさっき黒板消しにナニカしなかった?」
そこから始まるショタコン委員長とオジコンの喧嘩。周りはそれを煽り、私は、
「やかましい」
拳骨で鎮圧する。頭を押さえ黙りこむ二人。声なき悲鳴を上げているのが正しいか。
「あ、そういえば転校生がいたんだっけ」
私は完全に転校生と思われていた。まあ、今の外見年齢は中学・高校程度だ。
頭に手を当てる。さながらスコールのように。
「エリーセ・ローディー。エリーでもエルでもフラウでも好きに呼べ。私に敬語は不要だ。以上」
一応、笑ってみる。いつも通りのわずかな微笑み。
「彼女はこのクラスの副担任です。こう見えて皆よりかなり年上よ」
ざわつく教室。「年上~?」「凄い若い」「ちづ……イエ、ナンデモアリマセン」などの声がする。
「質問は後だ。一限は既に始まっている」
「さ、ネギ先生。お願いします」
私は教室の後ろの方でパイプ椅子に座り授業の様子を見る。
そこから先は正史通りだ。特に言うべきことはない。再び喧嘩が勃発、拳骨の前に鐘が鳴り、ネギは何もできずに終わった。やれやれ。
二限からは私の授業だ。何故か英語以外の全科目をやることになっていた。
「――――ナチスやナチス党というのは略称で、正しくはナチオナルゾツィアリシュティシェ・ドイッチェ・アルバイターパルタイ、英語でナショナル・ソーシャリスト・ジャーマン・ワーカーズ・パーティ、英語でいうナショナルの頭をとったものだ。日本語で国家社会主義ドイツ労働者党。ここらは豆知識程度にすぎない。覚える必要はない。必要なのはここから先だ。まず1916年7月2日にハンス・ウルリッヒ・ルーデルが――――」
英雄で覚える第二次世界大戦・欧州戦線。必要なことはちゃんと教え、雑談も交え面白い授業にしていく。先任が1800年代を終わらせてくれていたのが幸いだった。
「――――ニトロ化。一般的に危険な香りのする言葉だが、大抵その通りだ。ニトロ化合物の使い方にもよるが。ニトログリセリンは心臓病の薬だ。ニトロプラスは燃えの、ニトロセルロースはフィルムやセルロイドの原料。アニメのセル画というものは、このセルロイドを使っていたからついた名だ。基本的に炭素水素酸素窒素で構成される。特徴としては、NO2が炭水化物に引っ付いている形が多い。このNO2をニトロ基と言い――――」
実際に目の前で合成する化学。もう既に三学期で教えるべきことが終わっていたからできるエクストラ授業。
ほかにもいくつか授業をして放課後になる。
まあ、初日にしてはそれなりにできたのではないか。生徒の反応も上々だ。
約一名ほど警戒しまくり、約一名ほど怒気をはらんだ視線をくれ、数名ほど値踏みするような視線を感じた。
「はぁー」
屋上で葉巻を吹かす。デスクワークも終わり、一日の仕事が全て終わった。ネギの補佐と言いながら、かなりネギの分の仕事をしていた。24時間という拘束の中、私は時を止めることをもはやためらわない。
「ん?」
かなり遠く、誰かが大量の本を抱えて歩いている。成程あのイベントか。データベースと照合し、状況を確認する。
彼女は宮崎のどか。ネギは――――いた、比較的近くだ。明日菜も現場に近づいている。
「エイダ」
『Ja.
鬱クラッシャーズ (うつくらっしゃーず)とは【ピクシブ百科事典】
ああ、何という鬱展開。しかし、そんな僕に、コブラさんは来てくれなかった。そして三日経ち、楓先輩は、僕のことを普通に扱ってくれるようになった。ふう、よかった。それにしても、現実には、コブラさんはいないのだなあ。
楓先輩は、少し上目づかいで考える仕草をする。頭の中で変換しているのだろう。そして、徐々に顔を赤く染めて、全身ゆでだこのようになってしまった。
鬱フラグクラッシャー (うつふらぐくらっしゃー)とは【ピクシブ百科事典】
知らない人はニコニコで『鬱フラグブレイカーコブラ』を見ればいい。てっとり早く好きになれる
RTB』
「Roger that」
無線の相手は誰かはわからないが、よくわかっている。
「さて。逃がさんよ」
術師は7人。物量作戦でこちらを疲弊させるつもりだったのだろうが、相手が悪すぎるのにも程があったな。
千を超えるバケモノどもはあっさりと全滅。術師は全て闇の中で散り散りに逃げているが、足元に粒子を固めてラニングマシーン状態。何人化は飛んで逃げようとするがたとえ垂直に飛んだとしても闇は永遠にまとわりつく。散々楽しんだ後に、拘束した。
[[このサド]]
「敵に情けは無用。生かすのなら心を砕け、だ」
ゆっくり関節が外れていく。神経を切断しないように、血管を引きちぎらないように。ゴリ、ゴリと不気味な音を立て四肢が外されていくのを聞いて、あるいはその痛みに、術師は叫ぶ。
顎を外し呪文を唱えさせない。指を外し印を組ませない、札を握らせない、陣を書かせない。足を外し歩かせない。腕を外し攻撃を許さない。
無力化の全ての工程が終わり、連行する。非殺傷魔力砲撃で黙らせるのもいいが、こういったこともたまにはしないと鈍る。
引き渡しを終え、家路につく。
「ただいま」
「おかえりなさい」
迎えてくれるのは茶々丸だけ。
「エル! 見ろ! これでもう子供扱いはできんだろう!」
ではなかった。やたらハイテンションな金髪美女が約一名。
「美女でもかくはしゃぐと子供にしか見えないな」
「なぬ!?」
「あと無駄が多い。魔力が漏れまくっている。そんな即席術式でその石を使ってほしくない」
RADではないイミテーテッド・ジュエルシード、ブラッディシードを渡してみたらこうだ。人形や別荘など、職人なエヴァはこの素材をいたく気に入ってくれた。『一粒で麻帆良を一年動かせます』をキャッチコピーに総エネルギー量・出力を抑えたものだが、エヴァにかかればこの通り。封じられた魔力の代用品として使っている。
「くっ、待っていろ!」
また地下へ引きこもった。今度は別荘を使う気か。
「予想していたとはいえ……はてさて。ネギが来る前に要塞を築かねば」
麻帆良の地下は空洞が多い。私がサザエハウスのような小さな家と核シェルタークラスの大規模地下空間を建造するには非常に不向きだ。湖に潜水艦でも沈めてそこに暮らすとか、クレイドルを飛ばすとか、そんな馬鹿な案も――――いや、クレイドルはいけるかも知れん。さっそく設計してみよう。
家は適当にアパートかマンションか、近右衛門に手配させよう。最悪、ウェールズからゼロシフト通勤するという手もある。
「るんらら~」
「ケケケ、恐ロシイモノ見タゼ」
「なんだチャチャゼロ。私がぽんこつの真似をするのがそんなに恐ろしいか」
『相変わらず不気味ですね。焼きつくしますか』
「ヤッテミナ。エルテノ許可ナシニ動ケヌポンコツメ」
『はいだらー!』
「しかし今まで黙していたのが気になるな。ブラッディシードでも詰め込まれたか」
「アア、自由ニ動ケルッテ素晴ラシイナ」
「茶々丸、紅茶を頼む。砂糖は飽和量でな」
「ハイ」
ツッコミはない。いつものことだから。私が常軌を逸した甘党であることは、そしてその分量が比較的少ないことは。
異常に甘い香りのする紅茶にエヴァは渋い顔をするが、今はいない。
「相変ワラズダナ」
「どんな不摂生をしても死にはせんからな。動けるなら相手をしろ」
「ヲ、殺ルカ?」
「サイレントヒル。私は隣で見てるだけ」
「 」
「プレイヤーはチャチャゼロ」
「 」
「部屋を暗くしヘッドフォン推奨。NEWGAMEで難易度HARD」
カタカタカタカタと首が動く。
「茶々丸」
「ハイ」
灯が消させる。テレビが不気味に光り、PSに命が灯る。
かぽっとヘッドフォンがはめられ、最適な音量に調整。
「ジョ、冗談ダロ?」
タイトルでNEWGAME難易度HARDを選択。ハリーが飛び起きる。
「ギャアアアアア!!」
この時点で悲鳴。顔が笑ったままだから面白い。
このチャチャゼロ、私が関わったせいでものすごく怖がりだ。現実の亡霊や怪物は平気なくせに、虚構の世界のホラーは苦手としている。リアルよりリアルな想像ができるとか。
しばらくはこれで暇がつぶれるな。怖いくせにプレイするのはやめない。
「ヒィィィィィィ!?」
なるほど、初襲撃か。
怖がっていながらも手際よく倒している。
「ウギャアアアア!!」
学校にて敵に囲まれる図。ライトを消し忘れていた。
「イヤアアアアア!!」
初ボス。最初から乱射せずに様子を見、口が開いたところにショットガンを叩き込む。案外冷静なのではないかと疑いたくなる。
「なにをしとるんだおまえらは」
「チャチャゼロにサイレントヒルをやらせてみた」
「……そ、うか。そ、それよりもどうだ?」
「小娘が、背伸びしたい気持ちはわかるが」
「わ、私が小娘ならおまえはどうなる!」
「私は自他共に認めるロリババアだ。時に姉属性がつく」
「私はおまえについていけそうにない……」
「義姉が胸に飛び込んでくるがよい」
「……フン」
「……えい」
「なん……だと」
「フフン。我が胸が鉄板ではないこと、忘れていようとは。それに胸など飾りに過ぎん。特に子をなせぬ私にとってはな」
「あ……そう、だな」
「さあ来いエヴァ。サイレントヒル鑑賞会だ」
「え」
マクダウェル邸は今日も平和です。
かつては鬱フラグブレイカーと言えばコブラだった。どんなピンチもコブラが来れば大丈夫! しかし流石のコブラも病気だけはどうにも出来なかった。
こういった、鬱クラッシャー、鬱フラグブレイカーと呼ばれるキャラクターは、何人かいます。しかし、コブラほど有名なキャラはいません。そのため、何かピンチの時に、コブラの登場を期待する台詞が、ネットに書き込まれたりするのです。
これがフラグですか?』
「さて、どうだろう」
抱きとめたはいいが、そこは明日菜の真正面。あ、ネギさらわれた。子供一人抱えて恐ろしい速度で走る様は、超人ではないのか。超少女明日菜。……どこかで聞いたような。
「ゼロシフト」
とりあえず近くまで飛ぶ。主に明日菜の服のために。
「――――超能力者だったのね!」
どちらもかなり混乱しているようだ。ネギは超能力者でなく魔法使いだと白状するし、明日菜はどちらも同じだと言うし。
「ほかの人には内緒にしてください! じゃないとボク……」
「んなこと知らないわよ!」
「じゃあしかたないですね……」
「な、何よ?」
杖を掲げ、
「秘密を知られたからには記憶をぎゃん!?」
ネリチャギを叩き落とされた。私に。
「実力行使は最終手段。可能な限り話をし、妥協点を見いだせ。忘れたか」
「あうあうあうあう……」
そこまで力を込めたつもりはないが、ネギは非常に怯えている。
「あそこで迷わなかったのは褒めてやりたかったが……まだまだだな」
「もしかして、あんたも?」
「一応魔法使いだ」
「キャー! 殺されるー!」
「やかましい」
とりあえず黙らせる。
「おーい、そこの三人、なにを……ん? あ、エル姉、あ、いや、エル先生」
タカミチが現れた。頭を押さえうずくまっている明日菜と怯えているネギ、そして平然としている私。状況が把握できていないようだ。とっさに私を『エル姉』と呼んだし。
「なに、ちょっとな。詳しいことは後で」
「……ああ、わかったよ」
くわえ煙草のままどこかに消える。確かあっちは喫煙所だったと、どうでもいいことを思い出す。
「頭は冷えたか?」
「痛いじゃない!」
「……二発目、いくか?」
「わ、わかったわよ……」
さすがにおとなしくなる。
「さて。話ができるくらいには頭は冷えたろう。質問に答える形で話を進める。いいな」
「わかったわ」
屋上に落としてしまった葉巻の代わりに、新しいのを噛みちぎり火をつける。
「葉巻?」
「最初の質問がそれか……まあいい。タカミチはこれを吹かすのが苦手でな。煙草と同じように吸い込んではむせる」
「なんでアンタが高畑先生のこと知ってのよ! さっきだってエルねえなんて呼ばれてたし!」
「タカミチが小さい頃からこの姿だ。姉と呼ばれるのに何の不思議がある」
「オネエサマと呼ばせてください」
「却下だ。タカミチのことはいつか気分次第で教えてやる」
こいつの頭にはタカミチしかないのか。
「けちー……あ、いい匂い……」
風向きが変わって明日菜に煙が向かう。香としての側面もある葉巻は、特に私が好むものは甘い香りがする。
「それで、他には」
「――――なんでそのチビっ子魔法使いがこんなとこで先生をすることになってるわけ?」
「ネギ」
「あ、ハイ。えーと、修業のためです。『立派な魔法使い』になるための……」
「はぁ?」
「えっとですね、立派な魔法使いというのは世のため人のため陰でその力を使う、魔法界では最も尊敬される職業です」
「修業ねぇ……で、バレたらどうなるの?」
「失格、そして強制送還。最悪の場合オコジョにされ塀の中だ」
「だからみんなには秘密に……」
「ほほう。世のため人のため力を使う……なら」
明日菜から黒いオーラが立ち上る。フィールド系防御魔法か。背後からでもわかる、こいつは黒い笑みを浮かべているに違いない。
「却下だ。己の力を以て成就せずして何が恋愛か。安易な方法に頼って長続きする愛など存在しない」
見事なorz。
「そう、そうよね、魔法なんかに頼ろうとしたあたしは間違ってたのよ……」
「……わかってくれて幸いだ。それで、秘密にはしてくれるな? 選択肢はないぞ、もしここで了承しなければ記憶処理をしなければならない」
「記憶処理って……」
「記憶を消すことになります……」
「最悪、全ての記憶が消える。幼子からやり直す羽目になるだろう」
明日菜の顔が青くなる。当然か。
「約束してくれるか? お互いの幸せのために」
「するしかないじゃない!」
「ありがとう」
「ありがとうございます!」
最悪の場合、私が世界に喧嘩を売る羽目になったとは言えない。ただでさえネギは注目されているのだ、ネギの不祥事で『アスナ』の存在が世界に露見した場合――――私は今度こそ国家解体戦争を始めよう。世界制圧を始めよう。私は意思ある災害として、仲間として、友として、師として、あの二人とこの二人を護ろう。
「さて、私は屋上に戻るとしよう。二人も暗くならないうちに帰れ」
「はーい」
「ハイ!」
今度は葉巻を落とさない。まだ一時間以上は楽しめるのだ。
「ふ――――」
先から昇る煙を少し吸い込んで、吐く。
煙草は独にしかならんが葉巻は利がある。それに私は病気になどならない。かつてガイアの汚染環境でも平然と生きていた。
火が消える。吹かし続けないと葉巻は火が消える。携帯灰皿に突っ込み、近づいてくる気配に備える。
「こんなところで何をしている」
「エヴァのその反応を見たかったからだ」
「茶々丸に教えて何故私に教えん!」
「エヴァはからかうとかわいいなぁ」
話して無駄だと知ったのか。一つ溜息をつくと、
「エルとあの坊やの歓迎会がある。来い」
「ああ」
敢えてスルーするつもりだったイベント。この躯になってから、どうしても騒げない。
酒の席でもただ酒を飲むだけで、ほかのテンションについていけない。
「ようこそ!! エル先生――――!!」
扉を開ければ小口径ピストルの銃声――――ではなくクラッカー。
「エル先生こっちこっち!」
手を引かれ連れ回され、いつの間にかコップを握りジンジャーエールを飲んでいた。
目の前には朝倉和美。パパラッチである。
「ではエル先生。出身はどちらですか?」
「ドイッチェラント」
「ドイッチェラント? あ、ドイツですか。年齢は?」
「……34。確か」
近右衛門の作ったプロフィールはそうだったはずだ。
「34! その若さの秘訣は?」
「そんなに不思議なのかね? 特に秘訣はないのだが」
「いやいや、そんなはずはないでしょう?」
「強いて言えば……いや、ないな」
「そうですか……では次、彼氏はいますか?」
「いない」
「なら――――」
――――延々と根掘り葉掘り訊かれた。疲れた……
頼りになる宇宙最強の鬱フラグブレイカー、コブラのネタ画像を集めるまとめ ..
Whats up!!』の声。プロローグの始まり。
「怒首領蜂大往生デスレーベル二週目。理論的には攻略が可能だと判断され出荷されたが、しかし――――」
「やった! あれ?」
黄流第一形態が撃破され、第二形態に移行する。まだプロローグだ。
「大半がここにたどり着けずに撃破されてしまった。そしてこの最終鬼畜兵器 黄流に阻まれ、涙する者も多い。だが――――」
「やった! 今度は――――え?」
やっとプロローグが終わった。画面に現れるのは、先程の巨大な蜂に比べれば小さく、素人が何も知らずに見れば『弱そう』と判断するだろう、燃え盛る弐匹の蜂。
「また道中ですか? ――――えええええ!?」
弐葬式洗濯機と名付けられたその美しい最悪の弾幕。隙間はあれど隙は存在しない、究極の殺意。それを果敢に避ける自機。
「理解できたか」
ボムを一切使わず、ただ避けるのみ。そして、ついに――――
「今度こそ!!」
「ああ、彼は成し遂げた。人類をやめたとまで褒め称えられたよ。だが、それは才能を努力で磨き上げた結果だ。彼は魔法も、神経を加速させるような技術も一切ない世界でこれを達成した。これを見て、何か思うことはないか?」
「ハイ! 僕もこんなふうにデスレーベル二週目をクリアしてみたいです!」
無言で手刀をその頭に振りおろす。
「――――!?」
「一つのものに集中しすぎるのは長所であり欠点だ。それ以外に視界が存在しない。何かに打ち込むにはこれ以上ない才能だが、時と場合によっては致命的だ。切り替える癖をつけておけ。集中しすぎてもいい状況と、そうでない状況で切り替える癖を」
「うう……わかりました……」
頭を押さえ涙目になりながら了解するネギ。アーニャがこれを見たら、またうるさくなるだろうが、幸いにして今日はいない。
「頭は冷えたか。ではもう一度訊く。何か思うことはないか」
「……訓練次第で人は人間を超えることができる、ということですか?」
「その通り。だが、ただ魔法の使い方や躯の動かし方を鍛えるのではなく、どう使うか、どう立ち回るか。ネギは単純馬鹿だから、結局はゴリ押しになるだろうが、ゴリ押しでもフェイントをかけたり、フェイクで本命を隠したり、ミスリードさせたり、簡単ながら自分を有利にする方法がある」
「なるほど~」
今、馬鹿にされたの、気づいてないな。
「今日はここまでだ。明日までに本将棋のルールを覚えて来い。いいな」
「ハイ! ありがとうございました!」
正直、ネギにCAVEシューを、斑鳩を、東方を、イディナロークを与えたのは失敗かもしれない。
あの日から一心不乱に魔法を勉強し、練習し、1年も経たずしてそれなりの魔法が使えるようになっていた。あまりに根を詰めてやるので、息抜きと動体視力の鍛錬にと渡したが、若干染まってきている。
たとえば、私が怒首領蜂をしているときなど、希代の名台詞『よ ろ し く。』の全文を見て真剣に悩んでいた。
「ボクは……仲間を……」
真面目なのは長所だが、すぎると欠点だ。STGなど鬱エンドが基本なのに、これでは問題がある。いや、そういう問題ではない。のめりこみすぎているだけでなく、感情移入が半端ではない。魔法使いでなく、どこか別のところに行ってしまうのではないか。
「さて、今日が最後だ」
「ええ!? そんな!」
「明日以降、来ても何も教えない。困ったことがあれば力を貸すと言ったが、それほど困ってはいまい」
「そう、ですけど……」
「強くなりたいと思うのはいい、だが、力を得るにはまだまだ幼い。『力は正しいことに使うべきだ、少なくとも、自分がそう信じられることに』という言葉がある。だが、まだネギは世界を知らず、何が正しいか、何が正しくないか、そもそも正しいことなど存在するのか、ということを理解できるとは思えない。正しくないと知って、あえて行動する強さも、力を持つ者には必要だ。ネギはメルディアナで魔法という力を得るが、その力の使い道は、よく考えておけ。目的の無い、指向性の無い力は爆弾だ、周囲に被害をまき散らして、何もかも無差別に傷つける」
「…………」
「最終試験。今まで教えてやったことはなんだ? 今日が終わるまでに答えを出せ。正解なら、またいつか、今度は戦い方を教えてやる。不正解なら、馬鹿に力を与えるなどできない」
「え……ハイ!」
元気のいい返事だが、子供はやはり現金だ。素直なのだろう。
すでに準備完了していた将棋盤を囲み、パチペチと対局を始める。
「将棋にてプレイヤーはこの駒、王将になる。そして、自分も含め駒として考える。時には己を囮にして、いかなる犠牲をいとわず、自分が生き残り相手の王将を討つ。戦場の縮図だ」
「これが、戦争……」
「問題。戦争に勝つにはどうすればいいか。次の手で表現してみろ。いいか、ここは戦場だ」
「戦場……う~ん……こうですか?」
音もなく、駒が置かれる。その位置は、将棋盤の外。私の王将の背後。
「そう。それも正解の一つだ。だが、よく気づいた。そう、戦場にはルールは無用。勝てばいいのだ、WWⅡも、先の大戦も、誰も手段を選ばなかった。堅物なネギにしては考えた方だと言える」
他の正解は、プレーヤー自身を殺す、将棋盤をひっくり返すなど。戦争にルールなどないのだから。
かといって、ネギが出した以外の答えを私は求めない。そこまで汚れる必要はない。今は、まだ。
「今日はこれで終わりだ。もう少しかかると思ったが、なかなか早かった。あとは、最終試験だけだ」
「がんばります!」
「答えは頑張って出すものではない、悩んで出すものだ」
「はい!」
ネギの背中を見て、思い出す。
ナギもあんな頃があった。最も、教えろと言われたのは戦い方だったが。
正直、教えることもなかった。あれはほとんど本能で戦っていた。戦って、経験を得て、それからフィードバックする。
私が教えたのは、『どんなにずるくてもいい、勝った方が、生き残った方が正義だ』の言葉だけ。
そのせいでエヴァは悲惨な目に遭ったようだが。時期を見て呪いは解こう。
「……災害をまき散らしに行くか」
届けられたそれを見て、多少腹が立った。ネギといる時には取り繕っていたが、若干不機嫌だ。
メガロメセンブリアへの出頭命令。ずらずらと並び立てられた罪状が、余計に死にたいのかと思わせる。
超自然災害に喧嘩を売ったドン・キホーテどもめ、己の愚かさをその魂に刻むがよい。
「エルテ先生! 答えを聞いてもらえますか!」
「ああ。聞かせてくれ」
ネギがノックもせずに入ってくるが、それを咎めるつもりはない。それほど自信があるのだろう。
早かった、と思ったら、かなりの時間が経っていた。もう夜だ。
「心構えだったんですね?」
「そのとおり。力を持つ者の心構え。これで卒業試験は終わり。また、いつか成長したら、教えてやる。今日はもう帰れ」
「は、はい!」
本当に嬉しそうだ。
その背を見送った後、私はメガロメセンブリアに次元跳躍戦略砲撃をブッ放した。
少し、手加減して。
魔法世界では、テレビでどのチャンネルを回しても緊急放送が流れていた。
『現場の上空です! ご覧ください、見事に消え去っています! 以前『大災厄』エルテ・ルーデルが復活したことをお伝えしましたが、その力未だ衰えていないことを如実に示しています! 幸い攻撃前に避難勧告が『大災厄』より伝えられていたので死傷者は皆無ですが――――あ、新しい情報が入ってきました! 今回の件はメガロメセンブリア元老院がエルテ・ルーデルを挑発したことによるものと――――』
その主人公のコブラが、ネットで密かな人気者になっています。その一つは、鬱クラッシャーズ、鬱フラグブレイカーとしてのコブラです。
-----□ 鬱フラグブレイカー、鬱クラッシャーズ □-----.
うっ。僕は、言葉を詰まらせる。満子部長は、僕の心でも読めるのか? 人を困らせることに、天性の才を持つ満子部長のことだ。コブラの話から、クリスタルボーイの話に展開させて、楓先輩を恥ずかしがらせて、僕に被害が行くようにするつもりなのだ。
【MUGENキャラ作成】鬱クラッシャー、テッカマンランス作成 [ゲーム] ぶっちゃけ虹裏要素無いが気にするな! ..
鬱展開が起きる前に「ちょっと待ってくれないかな?」議論を始めてウダウダして最終的に変な結論を出して現地解散させる奴
鬱フラグブレイカー「コブラ」 | 世田谷のマンガ喫茶「ダンサン」
変わった惑星や、宇宙海賊ギルドとの確執、壮大な宇宙の伝説や秘宝。そういった話が展開する、スペースオペラとして大変面白い作品です。そして主人公は、左腕にサイコガンといった、精神力で撃つ武器を仕込んでおり、トレードマークになっています。
3話の鬱展開に大地の巨人がご立腹のようです [アニメ] 僕は(鬱展開)を防ぐ! ..
ヘッド底面で適度に水を捉えることで浮き上がり性能を向上させたコブラヘッド。その登場によって、よりスローなリトリーブが可能となり、ライトゲームにおける戦略の幅が広がりました。浮き上がりの良さを活かすことで、軽いウエイトは表層やシャローエリアにおいて“デッドスロー”状態をより効果的に演出しやすく、魚にじっくりとアピールすることができます。重いウエイトはディープにおけるブレイク攻略の際にもスローに攻めつつ、ボトムコンタクトからのリフトがしやすい特徴があり、釣りのリズムを乱す根掛かりも最小限に抑えます。カーブフォールの際は、ヘッド形状と水平バランス設計の組み合わせにより、僅かにゆらめくナチュラルフォールアクションを発生させます。フックはライトロッド・ライトラインでもしっかり刺さり込み、夜間でもラインを通しやすいラージアイの「ジグ31」を採用しました。
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地雷は、コブラ自身ではない。コブラについては、鬱クラッシャー、鬱フラグブレイカーなどと呼ばれており、女の子たちのピンチを救ってくれる頼りがいのあるキャラクターとして、ネットで定番になっている。
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All weapons free」
ウィッチ達が攻撃を開始。こちらも準備が完了した。何が起ころうと即座に対応できる。が、このまま何事もなく終わればいいことには変わりはない。
『毎回思いますが、フラストレーションが溜まりませんか?』
「私は平穏を好む。その為には努力を惜しまない」
『どこかの孤島で地下生活をすればよかったのでは?』
「そうできたらどんなによかったことか」
どの世界でもたいてい存在するカオスと蝶の悪戯。これがない世界は完璧な予定調和でシナリオが確定している。
「この世界に落とされ、世界の中に存在した時点でシナリオにほころびが発生する。シナリオというプログラムに発生したバグは、発生源が一切何もせずとも増加するものだ。それを観測するために動いて、世界に存在を認識されて、結局このザマだ」
『いつかの理使いの言葉は覚えていないのですか?』
理使いの言葉。よく覚えている。「この世界は異世界の因果により崩壊の危機を迎えている。故にあなたという強き力を以てこの崩壊を回避する。理の外に在るあなたなら理に縛られない」
「『ついでに私の暇潰しも兼ねる』発言で一切の信用は消滅したよ」
『ですが……警戒。ゲルトルート・バルクホルンの撃墜を確認』
「……エイダ、射撃を許可する。嫌な予感がする」
『Ja。支援攻撃を開始します』
エイダが撃つ7.62mmの魔力弾が、美緒とリーネの撃つ弾に混じりネウロイを叩く。ガトリングとは思えない程度の低い連射速度で吐き出されているのであろう亜光速弾を見ているつもりになりながら、私は思う。
このネウロイに関しては正史通りだろう。芳佳とペリーヌがゲルトルートを追いかけ地上で治療を開始している。上空では美緒とミーナとリネットが攻撃を続けているが、火力が足りない。
『ゲルトルート・バルクホルンの復帰を確認。――――ネウロイ、撃破されました』
「エイダ」
『確認しました。形状から原型はSM-36ストラマ及びGAF-1ヴィルコラクと思われます』
ヘルゼリッシュの網にかかった敵。ジョークで邪神と呼ばれた凶々しい機体と、超機動のイカ。
『幸い見つかっていません。撃破するなら今です。予備設定ロード完了』
「あれが『スペック通り』なら余計にな。フォイエル」
巨大な魔力の塊は、多数のカートリッジを消費して放たれた。文字通り光速の1200mm徹甲榴弾はラグを感じる間もなくストラマに着弾。その躯を削りコアに突き刺さり、それだけでは飽き足らず内部でその真の威力を発揮した。
幼子の身長ほどもある直径の疑似質量、それが幾つかのエネルギーに変換される。純粋な熱エネルギーであったり衝撃波であったり破片を飛ばす運動エネルギーであったり。それらは重巡航管制機を一瞬にして消滅させるに余りある威力であり、大型戦闘機サイズのストラマ型ネウロイは当然のこと、僚機とも言える位置に存在したヴィルコラク型ネウロイも耐えられるはずもない。これは文字通りストーンヘンジなのだ。たった一国で連合国軍を相手にできる脅威。
「あ」
『あ』
それだけ巨大な、ある意味で反物質のような弾頭が炸裂すれば誰かに気づかれるわけで。衝撃波と音と爆炎と残骸とその他諸々が残った空中を睨む美緒がいたりするわけで。美緒と私の間には空気くらいしか遮蔽物がないわけで。何かしらの要因で射撃地点がこっち側だと気づかれたら見つかるわけで。
「空間転移」
『MPが足りない』
そうは言うが、ちゃんと転移魔法は発動した。転移先は医務室。
「疲れた。気がする」
『気のせいです』
無意識が葉巻を指に掴ませる。
「…………」
犬歯が吸い口を噛みちぎる前に思いとどまることができた。
『正史に存在するはずのない存在……まさか、これが理使いの言う『因果』か?』
私の言おうとしたことを代弁してくれてありがとう。
「さすがに予想できなかった。ストラマとヴィルコラク……ネウロイは変態飛行機ばかりだったが、まさかな」
『異議あり。ブラックホークは正道にして極致の一つである』
「しかしこうなるとは。ヴィルコラクはともかく、ストラマはアクティヴステルス機だ。下手をすると他のステルス機も……いや、それ以上がくるのではないか?」
それ以上。ACE架空機が恐ろしいことは間違いないし、この時代の戦力にとっては普通のジェット戦闘機でも脅威だろう。少なくともあの二機はレーダーに捕捉されていなかったようだし。
「もし来るとすれば、エイダは何が来ると思う?」
『……次はブラックホーク。ならば、あれが来るかと』
「あれか。しかしだ、あれは悲劇の機体であって変態ではないと思うが」
『同重量の金より高価など、正気とは思えませんが』
確かにそれはそうかもしれないが、私はあれより美しい大型超音速機を知らない。
『何より重要なのは、あれが超音速『核爆撃』機ということです』
「……一撃でロンドンを更地にされる可能性があるか。あの二機の攻撃手段を確認できなかったのが痛いな」
「ほぉ、やはりあれはエルテの仕業か」
やはり、あの魔眼からは逃れられなかったようだ。
「さぁ、どうだろう」
「誰と話していた?」
はぐらかす私に、その左眼は鋭さを増す。
これは話さざるを得ないな。
「エイダ、許可する」
『坂本美緒を敵と認識。排除します』
「違う、最重要生存優先対象だろうが」
まったく、エイダのボケのせいで刀に手がいっている。
「機密だが、まあいい。知られて困ることでまないしな。紹介しよう。こいつはこの世界でいう私の使い魔のようなもの」
『分散並列型統合戦闘支援ユニット、エイダです』
「これが使い魔?」
30mm弾頭のペンダントを凝視する美緒に、アヴェンジャーを差し出してみる。
「同時に私の杖、アヴェンジャーでもある」
「アヴェンジャー? やはりあれは見間違いではなかったか。しかしカールスラントの技術廠に接収されたはずではないのか?」
「偽物を掴ませた。エイダとアヴェンジャーは分離できないからな。渡す訳にはいかなかった。ヘルマン――――ゲーリング准将にも話は通している」
バリアジャケットを解除し半裸になる。上空の爆発で無傷だったものは下着とサラシだけだった。アラミドケブラーのスラックスは右脚を守ることはできなかったが、下着は守った。オイルを被って燃え始めたから服は空中で投棄したから、バリアジャケットで代用していた。
血にまみれた包帯を取り去る。幾つもの金属片が突き刺さり、炭化しきった断面があった。
「! 酷いな……」
「治療しながら話す。手伝ってくれないか?」
ピンセットとメスを手に破片を抜く手伝いを頼む。脚の付け根をきつく縛り、血流を遮断する。
「構わないが、医者に診せた方がよくないか?」
「医者に診られると困る。カルテを書かれたらそこに記録が残ってしまう。『右脚を失った』という記録が」
「記録が残るとまずいのか」
「私の脚はいずれ元通り生えてくる。だから記録に残ると後々問題になる」
「本当に人間か?」
「いや。私は人間ではないよ。人間だとしても、この世界の人間ではない」
「なるほど、それも理由の一つか。手が無事なところをみると、嘘ではあるまい」
美緒がピンセットとメスを手に、私の右脚から破片を抜く。私は太股に刺さった破片を組織ごとえぐりだす。
膿盆にべちゃりべちゃりと落とされる私の一部だったものを見て、美緒は若干顔を青くする。
「う……痛くないのか」
そう言いながらも、美緒は膿盆にカランと金属片を落としていく。
「ほとんど、な。それにしても、驚かないのだな。その右眼は真偽を見極めることができるのかな?」
「捕獲作戦に参加したときから、いや、『初めて見たとき』からずっとおかしいと思っていた。何日も飛び続け、襲撃からも逃げ続け、遭遇した複数のネウロイを単機で撃破する。そんな存在が普通の人間であるはずがない、とな」
「欧州近辺を飛ぶと襲撃が多かったのは……」
「私達のせいだろうな。『所属不明ウィッチ』捕獲作戦が回を重ねるたびに、私のような能力を持つウィッチはエルテを探すために駆り出されていた。おかげでおまえを一日中観察することができた」
ということは、ある程度のスペックは知られている可能性がある。
「一つ、教えてくれ」
「なんだ?」
「私のスペック、これはどこまで報告した?」
「上昇可能高度は25000m、最高速度は時速3060km、航続距離は無限。確認戦果138機。私がした報告はこれだけだ。他の観測班がどういう報告をしたかは知らん」
『お見事です。ほぼその数値で合っています』
スコアは確認していなかったが、その他はだいたいその程度だ。エイダが高度82000ftでマッハ2.5を記録している。
穴だらけになった太股。その傷口を針と糸でふさいでいく。痛覚を制御できるこの躯がありがたかった。
「次の出撃で、シャーロットは音速を超える。ベルリンへ向け高高度を超音速で飛行するネウロイを撃墜するために。そして……今回と同様、イレギュラーが発生するかもしれない」
「何故そう断言できる? それにイレギュラーだと?」
「恐らく私の『予言』はこれで最後だ。この次は正史通り歴史が進むとは限らない」
「どういうことだ? 未来が決まっているとでも言うのか?」
「そうとも言えるし、そうとは言えない。未来はある程度決まっているが、それでも確率によって事象は発生するか否かが決まる。1%以下でも確率が残っていれば、それは発生するかもしれない。発生すれば、あるいは発生しなければ、それは歴史の分岐点だ。坂本美緒が宮藤芳佳を勧誘しなかった、海軍が宮藤芳佳を見つけることができなかった、そもそも宮藤芳佳にはウィッチとしての資質がなかった、あるいは宮藤芳佳が生まれなかった。そして分岐した世界の先では大きく歴史が変わる。世界は偶然の積み重ね、しかしその偶然を故意に起こすことはできる。奇跡は起こらないから奇跡だが、同時に人が起こすものだ。これを運命というのなら、運命は人間が覆すものだ」
この確率は、運命の理で支配されている。同時に、運命の理は唯一、普通の人間が干渉できる理だ。やろうと思えば、努力すれば、あるいは運という才能があれば、奇跡のバーゲンセールだってできてしまう。
「最も確率の高い、この世界が辿るべき未来は失われた。おそらく今までのネウロイとは桁違いの強さを持つネウロイが現れる。宮藤芳佳が巨大ネウロイを撃破し、501がガリアを解放する未来は発生しないかもしれない」
『次の交戦では、ノーマルネウロイとイレギュラーネウロイが同時に出現する可能性があります』
「私はイレギュラーを狩るためのイレギュラー。最良の未来へ世界を導くための道標。だが、私は知っているだけで、多少力があるだけで、無力だ。せいぜいイレギュラーを狩ることくらいしかできない」
「何故だ? おまえほどの力があればネウロイの巣とて破壊できるのではないか?」
「私が単独でネウロイの巣を破壊して、今度は人が私を恐れるだろう。私を手に入れることを望むかもしれない。今この滅亡に瀕した世界でも、己の権益にしがみつき欲望を満たそうとする人間はいるのだ。力は見せつけるものではない、隠すべきもの。私は隠れることができなかった時点で失敗している。存在を知らなければ、それは存在しないと同義なのだから」
幾つかの極限世界で、私は思い知った。人間の欲とはこうも人を愚かにするものなのかと。
「だが、その力があればもっと多くの人を護れるだろう?」
「私はこの世界が平和になったら死ぬ」
「なんだと!」
私は兵器だ。必要なくなれば消えるべきだ。ネウロイという人類共通の敵が消えれば、今度は人類同士の戦争が始まるかもしれない。人間は争う生き物だ。人類は戦争とともに歴史を歩んできた。戦争が始まらなくても、私という脅威は排除されるだろう。
「偽装だがな。死は絶対だ。歴史に『エルテ・ルーデル』は二度と現れない」
最後の破片を抜き取る。美緒の手はいつの間にか止まっていた。だから私がするしかなかったのだが。
「顔を変え名を変え国籍を変え、どこかで静かに暮らしているだろう」
「そう、か」
傷口にガーゼを当て、新しい包帯をきつく巻く。傷口がゆっくりと盛り上がっているのがよくわかる。炭化した組織を排除しながら、脚が生えてきている。
「再開の符丁でも決めるか。ラーズグリーズの伝説にでもこじつけて」
「なんだそれは?」
「この世界にはない童話だよ」
『歴史が大きく変わるとき、ラーズグリーズはその姿を現す。初めには、漆黒の悪魔として。
悪魔はその力を持って大地に死を降り注ぎ、やがて死ぬ。
しばしの眠りの後、ラーズグリーズは再び現れる。英雄として、現れる』
エイダが暗誦してくれた。ウォードッグの連中が陽気に話していたのが思い出される。陽気だったのはチョッパーだけだったか。
「この世界のラーズグリーズはヴァルキュリアの一柱。故に、この意味を知るのは美緒と私だけ。フフフ……」
「ほう、そんな顔もできるのだな。なにかおかしいことでもあったか?」
今の私は自嘲気味に微笑んでいるのだろう。不器用なのか器用なのか。
「フフフ、己を消耗品としか見ていない私が、生きて再開すると誓っている。これほどおかしなことはない。フフフ……約束だ美緒。私は何があっても生き残り、目的を遂行し、いつか美緒との、いや、501の皆との再開を果たす」
右手の小指を差し出す。
「ああ、約束だ。だが、別れは今ではない。そうだろう?」
「近い未来、世界が平和になったら、だ」
小指が絡まる。
「フフフ……」
「はっはっは」
想定外ではあったが、悪い気はしない。何故か私は、美緒の傍に長年連れ添った友のような居心地のよさを感じていた。
鬱フラグクラッシャー、果たしてその出来や如何に!? では、続きをどうぞ~
自分自身の鬱展開を乗り越えてきたキャラだと他のキャラの鬱展開も何とかしてくれそう感がある