なぜ、SGLT2阻害薬でDKAが起こるのか、具体的に説明します。
ご存知の人も多いかも知れませんが、2020年3月にアメリカ食品医薬品局(FDA)がSGLT2阻害薬の手術前休薬について、添付文書の変更を承認しました。
最後に、手術前に休薬すべきSGLT2阻害薬をリストにまとめました。
腎機能障害を有する2型糖尿病患者に、本剤10mg又は25mgを1日1回52週間経口投与したプラセボ対照二重盲検比較試験を行った。
投与24週時のHbA1c(主要評価項目:NGSP値)の投与前値からの調整平均変化量について本剤10mgは軽度腎機能障害患者(eGFR60mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満)で、本剤25mgは軽度腎機能障害患者及び中等度腎機能障害患者(eGFR45mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満)において、いずれもプラセボ投与群と比べ有意な差が認められた。
投与52週後における副作用発現割合は、プラセボ群で27.3%(87/319例)、本剤10mgで37.0%(37/100例)、本剤25mgで31.5%(101/321例)であり、主な副作用は低血糖(プラセボ:14.4%(46/319例)、10mg投与群:16.0%(16/100例)、25mg投与群:15.9%(51/321例))及び尿路感染(プラセボ:5.6%(18/319例)、10mg投与群:5.0%(5/100例)、25mg投与群:4.7%(15/321例))であった。(外国人データ)
SGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されていますので、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行ってください。
[PDF] 糖尿病用薬(ビグアナイド製剤,SGLT2阻害薬)の術前休薬期間
SGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されていますので、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行ってください。
SGLT2阻害薬を飲んだままだと、周術期のDKAのリスクが高まります。だから、周術期(手術前後)に休薬が必要になるわけです。
2 型糖尿病を合併した SGLT2 阻害薬を使用中の心不全患者が、食事摂取制限を伴う手
日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」においても、下記のように周術期の対応が追加されました(2020年12月25日改訂)。
ケトアシドーシスはインスリンが不足することにより引き起こされるため、特に1型糖尿病患者さんでは注意が必要です。「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」では、
「1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。」と記載されています。
なお、SGLT2阻害薬を使用中の2型糖尿病を合併した心不全患者が、
また、SGLT2阻害薬の投与中はDKAの発見が遅れるのも問題視されています。インスリン非依存的に尿中へ糖を排泄することにより、血糖値の上昇が抑えられるからです。正常血糖ケトアシドーシスといいます。
周術期におけるストレスや絶食により、、手術が予定されている場合には、。術後、摂食が十分できるようになってから再開し、再開後はケトアシドーシスの症状に留意する
Clin J Am Soc Nephrol 2023 ; 31 : 858-68
ケトアシドーシスはインスリンが不足することにより引き起こされるため、特に1型糖尿病患者さんでは注意が必要です。「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」では、
「1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。」と記載されています。
SGLT2 阻害薬が単独では低血糖を起こしにくいのはなぜか? ..
SGLT2阻害薬が処方されている患者で、泌尿器科も受診しているような患者がいたら要注意です。
[PDF] ≪消化器内科≫消化器内視鏡 前に休薬を考慮すべき内服薬
SGLT2阻害薬は前述のGLP-1受容体作動薬と並んで、所謂”やせ薬”と称されます。
[PDF] Ⅲ.術前に投与中止する薬剤 ① 出血のリスクがある薬剤(薬効別)
阻害薬は糖尿病治療のために作られた薬なのですが、近年の研究で心臓・腎臓を傷めてしまった患者さんに大きな利益をもたらされることが実証されており、最近では糖尿病がなくても心不全・慢性腎臓病を患っている患者さんに阻害薬を投与しましょう、という動きが加速しています。
Webサイトにも掲載予定です。 分類. 成分名. 当院採用医薬品名. 術前休薬期間. 抗凝固薬. ワルファリンカリウム.
日本腎臓病学会からも「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」が公開されました(2022年11月29日)。糖尿病学会と同様の対応です。
SGLT2阻害薬というのは薬の種類名で、実際の薬物名でいきますと、院内では、ジャディアンス®、フォシーガ®の採用があります。 ..
肥満を合併する、インスリン血糖値を下げるホルモンは潤沢に出ているが、それがうまく効いていない「インスリン抵抗性」が想定される患者さんでは優先順位第位、肥満のない、インスリンを自前で作る力がもともと体質的に弱い「インスリン分泌不全」が想定される患者さんでは優先順位は下位となっています。上述の通り、「インスリン分泌不全」タイプの患者さんでは合併症のリスクが高まるため、あまり優先して投与する薬ではないのですが、日回の内服で済む血糖降下作用の高い薬ですので、やせ型の「インスリン分泌不全」タイプの患者さんであっても、適切に他の薬と組み合わせて処方することがあります。
食事摂取制限を伴う手術を受ける場合は、手術3日前から休薬し、術後 ..
SGLT2阻害薬は術前に休薬しないといけないのに、その記載は添付文書内にしれっと紛れ込んでいるし、その理由もイメージしにくいのが、認知度を下げる要因だと思います。
[PDF] フォシーガ錠 5 mg、同錠 10 mg に関する資料
毎回出している「型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を見ると、肥満・非肥満によって薬物選択の優先順位が少し異なることがわかります。
る患者では、少なくとも手術前 3 日間は本剤投与を一時的に中止
食事摂取ができない手術が予定されている場合には,し,食事が十分摂取できるよ うになってから再開する
前各号に掲げるほか、本サービスにより、適切な回答をすることができないと ..
余談ですが、阻害薬は余分な糖の排泄、尿量増加によるダイエット効果が期待できるため、一部の自由診療クリニックなどで若年女性などをターゲットに、糖尿病ではないがダイエットをしたい、という方に向けて自費で処方されているようです。しかし、これまで述べてきたような注意点に留意し、処方に精通した医師が慎重に投与すべき薬と考えますので、私はあまり好ましくないことだと考えています。
4日間の休薬は患者の負担になる可能性も…… • 当院(佐賀大学医学部附属病院)での取り決め:
しかし、「手術前にSGLT2阻害薬を止める、その理由は……?」と聞かれたらどうでしょう。私もこの記事を書くまでは答えられませんでした。
☑ eGFR 45以上の場合、ビグアナイド薬の休薬は不要 ..
最後に、これは医療者側が留意することなのですが、前回・前々回のブログで取り上げた「インスリン分泌不全タイプ」、つまり、体質的・遺伝的に血糖値を下げる物質であるインスリンを自前で作る力が弱い人に阻害薬を投与すると、前述の「ケトアシドーシス」のリスクが高まるため、慎重に投与することが重要です。私はそのような患者さんでは、インスリンの注射、あるいは体内でインスリンを作るのをサポートする飲み薬を併用するようにしています。ちなみに、インスリンは自前でたくさん作れるがそれがうまく活かせていない「インスリン抵抗性」タイプではあまりこの心配はありません。
2015; 38: 1687)などに基づいています。 一方で術前 1 週間前から休薬すると、血糖コ.
さらに、日本循環器学会からも「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が公開されました(2023年6月15日)。今までと違って、2型糖尿病の合併の有無により、異なる対応が明記されています。2型糖尿病ではなく慢性心不全の適応で服用中の方は、3日前休薬ではなく、終日絶食になる日から休薬するかたちです。たとえば、手術当日だけ絶食の場合は、当日から休薬ということになります。
ルセフィは、糖尿病治療薬としても用いられるSGLT2阻害薬で、体重管理・維持を目的としたダイエット薬としても注目されています。
前々回のメトホルミンを扱ったブログで「歳以上のご高齢の患者さんはシックデイリスクが若い患者さんより高いため、メトホルミンは慎重投与、歳以上の方に新規で開始することは避けている」と記載しましたが、この阻害薬については、後述の通り心臓・腎臓といった高齢者で機能低下を起こしやすい内臓に非常に良い効果がもたらされることが実証されているため、ある程度お元気な高齢者では慎重に投与するケースもあります。
SGLT2阻害薬のうち、フォシーガ(ダパグリフロジン)及びジャディアンス(エンパグリフロジン)については、
さらに、これは前々回のメトホルミンと同様なのですが、「シックデイ」と呼ばれる、食事が摂れないほど体調が悪いときは、「ケトアシドーシス」と呼ばれる合併症リスクが上昇するため、休薬が望ましいです。少し鼻水が出る、のどが痛い、微熱がある、程度で食事は問題なく摂れる、ということであれば無理に休薬する必要はありません。